韓非子とは中国の戦国時代の人物・韓非が残したとされる書物です。
韓非子は諸子百家の中の法家という、今で言う法律や君主・臣下の立ち振る舞いが書かれたものです。
中華を天下統一した秦は非常に強力な国家を築いていました。
しかし、秦は領土が広くとも蜀や漢中など山が多く人口や農業は他国と比べてそこまで強かったわけではありませんでした。
それでも秦を戦国七雄の最強国たらしめたのは法による統治をおこなったからです。
法を整備して富国強兵を行った結果、ついに始皇帝・政の時代に天下統一が完了しました。
目次
キングダム 韓非子 とは
キングダム762話
秦王と信が古い友と知っていた時に騰は韓非子の裏の顔に気付き姫に別の顔があるかどうかを聞く。咸陽に来た韓非子の不自然さに李斯も気付く。姚賈の顔を知っていたのはやはり諜報員だからか。 pic.twitter.com/iZrVP2sLr1— 向井 (@cafekirai) June 24, 2023
韓非子は本名を韓非といいます。
これは儒教の孔子の本名が孔丘と同じことになります。
韓非子や孔子の”子”は先生という意味です。
韓非は諸子百家の法家に分類され、法こそがすべての人民が従うべき唯一絶対のものとしています。
また、君主は法の運用さえしていれば凡庸な君主であっても政治を行うことが出来ると説いたのです。
これは古来の名君や名臣を見習うべきと説いた儒教とは、大きくことなります。
生まれ
韓非子は前三世紀に、韓王安と側室の子供として生まれ韓に仕えていました。
王族ではありましたが、母親の地位が低く恵まれた立場ではなかったようです。
(一般の民衆と比べればかなり恵まれていますが・・・)
韓は戦国七雄の中でももっとも弱い国でした。
韓の土地は中華の中心地にありますが国土は狭く、また発展しているため開発の余地がなく他国からの進行によりジリジリと領土が削られている状態。
一時的に申不害というこちらも法家の宰相の時代に国力は増大しましたが、韓非子の時代にはいつ滅んでもおかしくない状況です。
李斯
韓非子と李斯は同じ荀子という学者から学んだ兄弟弟子の関係です。
李斯も法家の学者なのですが、荀子は儒教の学者です。
儒教から二人も法家の学者が出るという変なことになっていますが、韓非子・李斯ともに法家を代表する人物です。
のちに始皇帝を支えた李斯ですが、韓非子の才能には一目置いたとされています。
キングダム 韓非子 始皇帝
政と韓非子の対話。
人の本質や性善悪説についてどう掘り下げて語るのか楽しみにしてたのに、無言の数コマで終わってしまいそう。#キングダム pic.twitter.com/jeEZE8t8PY
— ザトさん@飛騨高山移住生活 (@zato3_hida) June 24, 2023
まだ始皇帝が天下を統一していない時に韓非子の著作のうち二篇を読んで感銘を受けたそうです。
(韓非子は五十五篇あります)
韓非子を見て「この著者に会えたら死んでも構わない」と漏らしたといわれます。
当時秦の宰相だった李斯は著者の韓非のことを教え、韓を攻めれば会えることが出来るといい始皇帝はその通りにしました。
韓非子と対面した始皇帝は気に入った様子でしたが、すぐに登用するには至りません。
また、李斯は韓非子の才能から自分の地位を脅かされるのではないかと考えある行動に出ます。
死亡
韓非子が秦に訪れてまもなく李斯は行動を起こします。
始皇帝に韓非子のことを讒言して投獄に追い込んだのです。
始皇帝は韓非子を投獄させたのを後悔して、牢から出そうとしましたが李斯が先手を打ちます。
李斯は韓非子に毒薬を渡して自殺するように迫ったのです。
こうして韓非子は李斯の策略によって命を落とす結果となりました。
キングダム 韓非子 法家思想
法家思想とは、法によって罪と罰を明確にし人民を君主の元従わせるという思想です。
それまでの殷・周王朝は王による徳と儀礼によって収めてきたといわれています。
この時代には法律という概念はほとんどなく道徳的価値観によって統治してきたとも言えます。
初めて中国で法律として公布されたのは春秋時代の鄭です。この鄭は弱小国ですが周王朝の分家で格式高い国です。
この弱小国・鄭をうまく導いた名宰相・子産という人物が中華史上初めて法を文字にし公布しました。
それまでの法はあったそうなのですが文字にされていなかったので、機能していなかったのではと考えられます。
統治者である君主にとってはあまり法を明確にしないほうがメリットあったのでしょう。あいまいさ故に解釈次第で刑罰を変えることが可能ですからね。
キングダム 韓非子 役割
秦が他国より抜きんでて強国になったのは間違いなく法が影響しています。
その中でも戸籍を整備したり分家を促進して開墾地を増やした商鞅の貢献は多いのですが、今回のテーマではないので省略します。
特に15歳以上の男子はすべて兵役が課せられたため秦軍は100万の兵がいたといわれています。
李斯・韓非子はともに儒家の荀子から学んでいます。
荀子は人を礼によって正しい方向に導くと考えていましたが、二人(特に韓非子)は法によって統制するべきと主張しています。
現代をみれば法治国家といわれるように法律に基づいて国家を運営しています。
荀子などの儒家の教えは少人数の集落などでは問題なく機能しますが、李斯・韓非子のほうが現代的で国家の運営に適しているといえますね。
始皇帝に残したもの
始皇帝は韓非子の書を見て感銘を受け「この著者に会えるのなら、死んでも悔いはない」とまで言っています。
韓非子は君主の立ち振る舞いなどについて事細かに書かれていて、妻や側室のことにまで書かれています。
この韓非子が始皇帝に与えた影響は歴史の中にはあまり出てきませんが、秦の規律を整えたという意味では大きな貢献だったと思います。
しかし、始皇帝には韓非子の教えは届いても、後継者である胡亥には届かなかったようで彼は享楽にふけり滅亡の原因を作っています。
法整備
李斯が最も活躍したのは天下統一後のことでした。
それまでの周王朝は各地に王族や臣下に封地を与え統治させました。(封建制)
しかし、李斯は全国を郡と県にわけ中央から役人を派遣させ統治させます。(郡県制)
封建制は王族などに権力を分散させましたが、郡県制は皇帝一人に権力を集中させるため春秋時代のように独立政権になることを許しませんでした。
皇帝による直接統治によって権力の分散を防いでいます。
天下統一以前にも秦は県を配置させ統治しましたが、李斯はいくつかの県の集団を郡としています。
その他にも李斯は、貨幣と度量衡の統一を行い経済を発展させようとしています。
弊害
李斯による法整備で秦は皇帝に権力を集中させ統治を行ってきました。
しかし、いつの世も完璧な法というものは存在しません。すこしずつ弊害が出てきました。
それは刑罰が厳しすぎたのです。
とくに顕著に出たのが万里の長城などの労役です。
この労役は期日までに勤務地につかないと死刑になってしまうもので、陳勝・呉広の乱は長雨で期日までに到着しないために起こりました。
この乱が引き金となり項羽・劉邦らにより秦は滅亡に向かってしまいます。
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イトウ カイヂ